十七月の住居
奥和田 健
Okuwada Architects Office
株式会社 奥和田健建築設計事務所

大阪の郊外、枚方市に「東香里」という住宅街がある。起伏に富んだ街並みで、それぞれの敷地が特徴的な形状を持ちながら、家が連なり、街が形成されている。

建主は、東香里の丘の頂部にある敷地を、住宅を建てるために購入し、私に連絡をくれた。
敷地を歩くと、前面道路から奥に向かうほど、段々と北側に飛び出していく、個性的な平面形状だった。そして、南側の隣地は、当該敷地より標高が高い上に、背の高い建物が建っていて、本敷地への採光に工夫が必要であった。さらに、隣地の擁壁に被さっている間知石が、建主の敷地内に入り込んでいた為、それらを建築的に処理する表現が求められた。
 


建主は単身。
生活の中で他の人に気を遣う必要もなければ、内部建具の必要性も少なく、生活空間を大きなワンルームで構築することができる。
されど、友人を招き食事もするパブリックエリアと、睡眠や入浴をするプライベートエリアは、少し離したいという気持ちも存在する。
南側隣地の標高が高かったこともあり、中庭をスリット状の平面形状にし、住宅内外に光を届けるバイパスとして機能させ、先の住要素を緩やかに繋ぐことを試みた。
 



南側隣地(敷地左側)との間をアプローチとして計画。
 
敷地中央にある、スリット状の中庭まで動線を導き、その脇にエントランスを設け、パブリック要素でもあるリビングへといざなう。
 
コンクリートの大屋根と壁で構築
 
リビングから街へつながる開口
 
南側(写真左)擁壁の間知石が入り込んでいる部分を斜面状に左官し、その頂部を植栽スペースにした。
コンクリートの屋根の軒をその上部に被せ、雨が植栽にあたるようにし、更にその水が斜面を伝うようアプローチを形成。
 
南側隣地の標高が高く2階建ての住宅が建っているため、今回の敷地内に採光を引き込むため、敷地中央部にスリット状の中庭を設けた。住居内外に光を届けるバイパスの役割を持つ。
 
庭を土間が通りぬける
 
リビング(内)、中庭(外)、寝室(内)と反復する空間を、一つの軸線が通る。
 
回遊できる平面
 
東側の開口より、光が注がれる
 
庭(外)を通り抜ける土間(内)
 
ハイサイドライトとロフト床、そして庭(外)と土間(内)
 
コンクリートの空間に、やわらかさを与えるため、土間の天井にはシナ合板を用い、薄く色を入れている。
 
光とスラブが交差する。右は寝室。住要素の緩やかなつながり
 
ハイサイドライトは街まで連続している。スリット状の中庭を通る光は南北方向。ハイサイドライトは東西方向に光が通る。
 
浴室とバステラス

寝室と内庭

夕景

キッチンの上部にもロフト床がある

回遊できる室内

ダイニングスペース

外へと

十七月の住居
設計:奥和田 健・福川 加奈子|okuwada architects office 奥和田健建築設計事務所
撮影:山田圭司郎 YFT(photo&movie)
構造:土屋茂|株式会社 土屋設計
施工:株式会社 木村工務店
植栽:和想 WA-SO
協力:塗装 OPTOMUS、照明 FLOS、家具 CASSINA、本棚 POLIFORM(ACTUS)、キッチン KITCHENHOUSE、浴室 JAXSON

所在地:大阪府枚方市
主要用途:専用住宅
構造規模:鉄筋コンクリート造(RC造)平屋建て