阿倍野区の家|house in Abeno

okuwada architects|奥和田健建築設計事務所

< 2025年 9月中旬 完成写真と共に UP予定 >

阿倍野区の家コンセプト

「境界を超える窓、都市を抱く暮らし」

建主 夫婦が見つけたのは、アーケード付き商店街に接する14坪の細長い敷地であった。西側には商店街が広がり、北側と東側に隣家が接近している。さらに、南側の4m道路の向かいにも隣家がある環境であり、都市の息づかいが伝わるエリアであった。大阪の下町におけるアーケードは、地域住民が協働で修繕や清掃を行うことで維持されている。その行為は単なるメンテナンスにとどまらず、人と人とを媒介し、都市を成立させる共同的な営みとして機能している。住まいと商店街、生活と共同体が重層的に交わるこの都市性を背景に、本敷地は街の活動と密接に連続する場所にあった。

住宅の幅は、敷地形状から2.73mと、狭くなることが想定された。それもあり、壁で囲み狭さを助長させるよりは、都市風景を享受できる窓を設けて視界を隣地や道路の向こう側まで広げ、敷地の外まで空間体験を拡張することを優先した。そして、地域住民が中心となって行うアーケードのメンテナンスに参加するため、住宅からアーケードの屋根へ登り、商店街の手助けをしながら地域社会と繋がりを保つ住宅を考えた。

地域と住宅を繋ぐ最初の接点となる1階のアプローチには、道路と同じアスファルトを用いている。敷地境界を越えて道路を住居内へ延長することで、公共を私的な空間へ迎え入れる。2階にはリビングがあり、壁一面に窓を設けている。その窓からは、八百屋の賑わいや商店街のBGMが聞こえ、地域社会の風景を住まいの中に取り込むことができる。さらに、住まい手の日常の営みを都市の風景として返すことで、2階においても近隣との繋がりをもつことができる。3階に上がると、夫の寝室である部屋(小)がある。隣接してテラス1があり、外でのアクティビティを楽しむことができる。テラス1を抜けるとはなれがあり、その先にはテラス2が広がり、アーケード屋根へと繋がっている。住宅を通じてアーケード屋根に上がることで、地域住民が中心となって行うアーケードのメンテナンスに参加できる。同様の住宅が増えれば、アーケード屋根の上で地域の交流も生まれやすくなるだろう。やがてアーケード屋根は、人びとが行き交う「空中の道路」として機能するかもしれない。

構造面では、ふたつの特徴がある。ひとつ目は、隅切りによって生じた45度の斜め部分に、耐力壁を2重に設け、X方向とY方向に振り分けた点である。これにより、南側の全面窓に構造ブレースを入れる必要がなくなった。ふたつ目は、道路斜線によって生じた3階の斜め壁を、傾斜角30度以内に抑えることで耐力壁として成立させた点である。その上で、住人が快適に暮らせる天井高さを確保している。

2階には「リビング」があり、壁一面に窓を設けている。その窓からは、八百屋の賑わいや商店街のBGMが聞こえ、地域社会の風景を住まいの中に取り込むことができる。さらに、自らの日常の営みを都市の風景として返すことで、2階においても近隣とのつながりを持つことができる。

3階に上がると、もう一つの寝室である「部屋(小)」がある。隣接して「テラス1」があり、外でのアクティビティを楽しむことができる。「テラス1」を抜けると「はなれ」があり、その先には「テラス2」が広がり、アーケード屋根へとつながっている。住宅を通じてアーケード屋根に上がれることで、地域住民が中心となって行うアーケードのメンテナンスにも参加できる。同様の住宅が増えれば、アーケード屋根の上で地域の交流も生まれやすくなるだろう。やがてアーケード屋根は、人々が行き交う「空中の道路」として機能すると考えられる。

この家が境界を超えてアーケードや近隣住居と建築的に繋がり、都市を包み込む存在となること。そして、住民同士が関わりを保ちながら、地域社会の循環と更新が進んでいくこと。それが実現すれば、設計者としてこの上ない喜びである。
(奥和田 健)

阿倍野区の家|house in Abeno

設計:奥和田 健 / okuwada architects
奥和田健建築設計事務所|担当 奥和田健・青木優嗣
構造規模:木造 2階建て
施工:カタヤマ建築工房|キッチン:okuwada original