Lの敷地の住宅| L site L house
奥和田 健 / Okuwada Architects Office
奥和田健建築設計事務所
(
新建築 住宅特集 2020年4月号 掲載
)
そういえば僕が6歳になった時
寝室として「はなれ」を与えられた。
ご飯を食べて風呂に入ったあと
独り「母屋」から「はなれ」へと移動するのだ。
初めは少し寂しい気持ちにはなったが、春が来て暖かくなったと思いながら移動中に目を横に向けると、渡り廊下の側の庭に猫が来てくれて、こちらを向いて呼び掛けてくれた。
月灯りで影ができるのを知ったり、雪に温かみを感じることができたのも、「はなれ」へと移動する時で、生活の中で触れる「外」が こんなに豊かなのかと思った。
今回の敷地は大阪市内。
建主はL型の敷地を用意していた。
繁華街に近く、オフィスや高層・ 低層の住宅と共に、戦時中に焼失を免れた町家も残っている地域だ。
道路を挟んで向かい側にも路地があり、地域住民はその路地を使い生活をしている。
この向かいの路地から道路、そして敷地の端からLの折れ点、さらに端部へと歩いていくと、その節々ごとの都市風景を見ることができた。
細長い敷地は、同じ面積の敷地と比べて、端から端まで移動できる距離が長く、移動を楽しむことができる。これらの都市風景の断片を、外部へ透過させながら内部に入れ込むと、このLの敷地の個性が増幅すると考えた。
そして、建主も外でのアクティビティを嗜む方だったこともあり、生活の中で触れる「外」を豊かに 感じられるように、家の構成を考えていった。
建主が持つ生活を整理しながら、それぞれに必要な最低限のヴォリュームを単純な矩形に整える。そして敷地と照らし合わせ、矩形を組み合わせて営み同士の関係性を考える。
今回の建主の家族構成は単身。寝食と寛ぐためのヴォリュームのほかに、建主の趣味である自転車の収納・整備のためのピット、室内に入る前にアクセスができるシャワールームのヴォリュームが必要であり、それらを繋ぐと、少し細長い矩形になった。
これをL型の敷地に合わせて引き伸ばし機能の境目でぽきっと折り、その折れ目を開かれた「外」にした。すると、内部空間はふたつに分かれ、向かいの路地から前面道路、家の中へと「外 → 内 → 外 → 内 → 外」と移動していくことになる。
その内外の切り替わりと生活の機能を対応させ、生活の場を整えた。
(※T)
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Lの敷地の住宅
設計:
奥和田 健
okuwada architects office/奥和田健建築設計事務所
撮影:山田圭司郎 YFT(photo&movie)
(※T)については撮影 高橋菜生
構造:土屋設計 施工:トータルトーク
植栽:堀成徳 今中久美子|森林食堂 Happa nursery
所在地:大阪市
主要用途:専用住宅
構造規模:木造2階建て
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新建築 住宅特集 2020年4月号 掲載
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