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春先に年度が変わり仕事も落ち着いてきたので、旅行にでも行こうとパンフレットを見ていると、1通のメールが届きました。

「はじめましてUと申します。実家のリノベーションを考えております、 間口約3.6m、土地10坪、鉄骨の家。 親と私達夫婦で暮らす玄関別の完全分離型二世帯にしたいと考えております。」

今まで改修案件や狭小の設計経験もあったのですが、双方合わせ持ちながら完全分離の二世帯住宅にして欲しいとの一見無茶にも思える内容に興味が沸き、旅行を後回しにして現地を見学することにしました。
 
建物は都心の職住が一体となった場所に建っていて、1階が自営をしていたお父さんの作業室、その上に住居がのったっている建築構成。Uさんと話をしながら平面で世帯を分けるよりこの建築が持つ4つの層(レイヤー)を使いそこに住要素を配置して二世帯住宅にすることを考えました。

1層目は、この地域で長く暮らしてきたお父さんの部屋を基本ワンルームで計画。これは昔の作業場と同じく御近所さんと話しやすい位置であり、独りになりがちな高齢者が街とつながることの出来やすい配置だと考えました。
2層3層4層は子世帯の住居とし、空中にあがるにつれ室内明るさが増してくる構成としました、実際のところ4層目のセカンドリビングからは空が見えるし街を見渡すことも出来ます。
3層目のリビング中央にはコンクリートブロックでカマドの様に包まれたキッチンを配置し、この家の中心となる場所を構築できました。
 
完成してから半年後に写真撮影で訪問。リノベーション時に余った床材を使って施主さんがテーブルを作ってくれていました、住みこなしてくれていると感じたひと時でありました。 
 
















設計: 奥和田 健 /株式会社奥和田健建築設計事務所
撮影:宮本 淳